アメリカに銀行口座や証券口座あるけど、アメリカで確定申告は必要?

アメリカではみんなが確定申告を出す

アメリカでは、所得が一定以上ある個人は全員確定申告をします。サラリーマン収入2000万円以上や自営業者、賃貸収入がある人だけ確定申告をする日本とは違います。

さて、日本に居住するあなたがアメリカに銀行口座や証券口座があり、そこから利息収入や配当収入や株式売買益があったとします。その収入はアメリカの歳入庁(Internal Revenue Service: IRS/日本の国税庁のようなところ)に確定申告書を通して報告する義務はあるのでしょうか?

税金がかかるかどうか、ではありません。確定申告が必要かどうか、をこのエントリでは確かめます。

日本でサラリーマンをしていると確定申告という習慣がないので、納税はすべて源泉徴収で済んでしまいます。すると「確定申告書提出義務」について考えてみることはありません。

しかし、アメリカでは、源泉徴収ですでに納税が完了していたり、税額ゼロであっても、あらためて確定申告書を提出する必要がある場合が多々あります。(いくら納税していますよ、税額ゼロですよ、と主張するために申告書を提出する、と思っても良いです。)

というより、なんらかの所得が発生した場合、確定申告書で開示する必要がある、というのが原則です。

申告書を提出しない場合、罰金が課せられることになっています。(※)

この原則はアメリカ国外に居住している非アメリカ人にとっても同じです。

とはいえ、アメリカ国外居住者に対しては、徴税権の行使に限界があることもあり、様々な例外規定があります。

※ただ罰金は、税額に対してX%が課せられる、と決まっているので、もし実質税額がゼロの場合は、罰金もゼロ、となる可能性が高いでしょう。

アメリカ国外に住む非アメリカ人の申告義務

原則アメリカで所得のあるもの全員が確定申告書を提出しないといけないですが、アメリカの銀行口座から利子所得がある日本に居住する日本人、アメリカの証券口座から配当所得や株式譲渡益がある日本に居住する日本人の場合はどうでしょうか。

結論:確定申告の義務はありません。放置でOK。ただし下記に注意。

注意1:居住性

上では日本に居住するあなたを想定しています。

言い方を変えると、アメリカ国外に居住する非アメリカ人、という納税者を想定しています。

アメリカ国外に居住している状態というのは、下記の式で「判定」します。

1)2年前にアメリカに滞在した日数x1/6

2)1年前にアメリカに滞在した日数x1/3

3)当年にアメリカに滞在した日数

上記1)、2)、3)の合計が183日以下の場合、あなたはアメリカ国外居住者(Nonresident Alienと呼称されます)です。

この判定方法はSubstantial Presence Test(SPT)と呼ばれます。

SPTで国外居住者と判定されれば、銀行利息と証券口座からの配当所得について、確定申告書の提出は必要ありません。

 

注意2:配当所得と譲渡益に対する源泉徴収多すぎかも

SPTで183日以下であれば、あなたの銀行利子は免税です。

しかし、配当収入ついては免税にはなりません。多くの場合10〜30%を証券会社が源泉徴収して、アメリカの歳入庁にあなたの代わりに納税しているでしょう。

※利子所得と配当所得は、FDAP所得と呼ばれます。FDAPとは、Fixed, Determinable, Annual, Periodicalの略です。FDAP所得を支払う際、支払者(証券会社)は源泉徴収義務を負います。

アメリカの銀行口座で10万ドル(約1000万円)の利息を稼いでもアメリカでは免税ですが、アメリカの証券口座で10万ドルの配当所得を稼いだ場合、10%を納税しなければなりません。

非アメリカ人でアメリカ国外居住者の配当所得が10%というのは、日米租税条約があるおかげです。

アメリカ国内法では原則30%の源泉徴収が義務付けられているので、証券会社の中には誤って30%を源泉徴収している場合があるかもしれません

譲渡益については、あなたの居住地が源泉地となります。日本に居住しているなら譲渡益の源泉は日本。居住も所得源泉も日本なので、アメリカでの課税および申告書提出義務はありません。

しかし、ここでもアメリカの証券会社が誤って10%や30%の源泉徴収をしている場合があるかもしれません。

もし源泉徴収が多すぎる場合は還付請求ができます。還付請求は確定申告書を通して行います。

ちなみに、アメリカの証券会社に自分が日本に居住している旨を伝えるには、この書類を提出することになっています。

Form W-8 BEN

証券会社はこの書類に基づいて源泉徴収の%を決定します。

例えば、日本居住者で配当金があるなら10%源泉だな、日本居住者で譲渡益があるなら0%源泉だな、といった具合です。

しかし、間違えている可能性が往々にしてあるのがアメリカクオリティです…。

注意3:日本では申告義務が生じる

まあ、当たり前のことなんですが、アメリカで得た所得を日本の国税庁に報告しなければいけません。

この場合、日本で確定申告をすることになります。申告分離課税ってやつ。

配当所得については、すでにアメリカに税金を払っているので、日本では1)所得額を報告、2)それにかかる日本の税金は外国税額控除で相殺、ということになるでしょう。住民税には外税控除は適用されないので、そこは納税、という課税関係になるでしょう。

銀行利息については、アメリカで免税なので、日本で納税する必要が出るでしょう。まあ銀行預金の利息は微々たるものなので、大したことは無いでしょうけど。

ちなみに、日本の証券会社の「特定口座」で米国株を運用すると、譲渡益に係る国税&地方税は証券会社が勝手に源泉徴収してくれます。その場合、日本での確定申告は不要でしょう。

補足:1042という書類で課税関係が終了している

アメリカの銀行口座や証券口座で発生したあなたの所得は、Form 1042 Annual Withholding Tax Return for U.S. source income of Foreign Personsという書類がIRSと銀行・証券会社の間で取り交わされることで、お上に開示されています。

もし証券会社からこの書類が届いたら、「ああ、証券会社がForm 1042を発行しているので、私のアメリカ政府に対する課税関係は終了しているのだな。個人確定申告書を提出する必要はないな」と思ってください。

または、もし余力があればForm 1042のLine 62cと63eを見てください。62が所得額、63がそれに対する源泉徴収額です。「配当所得が30%も源泉徴収されている。本来なら10%でいいはずのにふざけんな!」とか、怒ってみてください。

先に説明したFDAP所得、例えば配当金は、証券会社が源泉徴収義務を持ちます。つまり証券会社があなたに配当金を銀行振込する際に、税金分を抜いておき、IRSに送金しなければいけません。

FDAP所得はForm 1042の提出のみで課税関係が終了するので、Form 1040(米国個人確定申告書)をIRSに提出する必要はありません。

譲渡益はFDAP所得ではないので、Form 1042には記載されません。

課税&申告義務原則と例外(税務ヲタ向け)

もし税務に詳しい方がこのエントリを見ている場合。もう少し課税関係を詳しく見ていきます。

所得源泉と申告義務について興味ない方はすっとばしてください。

居住地(Residency)と所得源泉(Sourcing)が課税・申告の原則

アメリカでも日本でも課税の有無(≒申告の有無)は2つの要素で決定します。

  1. 居住地
  2. 所得源泉地

居住地はあなたが今どこに居住しているか、です。

居住の決定は、例えばアメリカの183日テスト等で判定します。

アメリカに居住していれば、アメリカで申告義務があります。

所得源泉とは何でしょう。これは、その所得がどの地で発生したか、です。

例えば、日本の地で働き、その対価として給与が発生した場合、その給与の源泉地は日本です。

アメリカに出張し、アメリカの地で労働を行い、その対価をもらったとします。その場合、その対価で得た給与・報酬はアメリカ源泉所得です。

課税・申告義務の原則は、アメリカに居住していなくても、アメリカに源泉所得があれば、アメリカで「原則」課税され、かつ申告義務が生じます。

これは逆も真なりで、日本に居住していなくても、日本に源泉所得があれば、日本で「原則」課税され、申告義務が生じます。

アメリカのケースで、もう少し所得源泉を見ていきます。

銀行利息所得については、利息を払う金融機関がどこに所在しているかで源泉が決まります。

もしアメリカの金融機関で口座を持っており、そこから利息が発生している場合、その利息はアメリカ源泉所得です。

配当所得については、配当を支払う主体(企業)がどこに所在しているかで源泉が決まります。

もしアメリカ法人のマクドナルド株を保有しており、配当を得ていたとします。その配当はアメリカ源泉です。

株式譲渡益については、株式を売却した個人が居住する地が、源泉地となります。

例えば、日本に居住するデイトレーダーが、アメリカの証券会社に口座を保有しており、その口座で管理していた株式を売却したとします。この売却で得た譲渡収益は日本源泉となります。

さて、原則通りであれば、日本に居住する個人が利息、配当所得、株式譲渡益をアメリカに保有する口座で得た場合、どのような課税と申告義務が生じるでしょう。

<原則>

銀行利息所得:アメリカ源泉なので、アメリカで課税され、かつ確定申告する必要あり。

配当所得:アメリカ源泉なので、アメリカで課税され、かつ確定申告する必要あり。

株式譲渡益:日本源泉なので、日本で課税される。アメリカで課税されたり、アメリカで確定申告する必要なし。IRC 865(a)2

アメリカ非居住者がアメリカで得た利子・配当の課税&申告義務の例外

さて、上記の課税関係に例外規定があります。利息所得と配当所得についてです。

例外規定とは、つまり原則どおりにしなくて良い、ということです。

どのような例外規定になっているかというと、

<例外規定>

銀行利息所得;アメリカの居住者でない個人が保有するアメリカの預金口座から発生する利息は、アメリカでは免税。Nonresident Aliens Exclusionss from Income

配当所得:アメリカの居住者でない個人が保有するアメリカの企業からの配当所得は、源泉徴収されている限りアメリカで確定申告する必要なし。ただし、もし配当所得以外にアメリカ源泉所得があり、その源泉所得が源泉聴取されていない場合は、確定申告書提出義務は残る。
1040NR Filing Instruction Table A. Who Must File Form 1040NR – 2 

 

まとめ

アメリカで銀行口座や証券口座があり、そこで利子、配当金、株式譲渡益が発生した場合、アメリカで確定申告をする必要があるかどうか見てきました。

結論は、アメリカで確定申告は必要ない。日本では必要、でした。

アメリカは原則、全員毎年の確定申告書を義務付けられています。

しかし、利子、配当金はFDAP所得と呼ばれ、源泉徴収→Form 1042発行という流れで課税関係は終了する、という例外規定が存在します。

源泉徴収→Form1042発行の流れの中で、口座保有者であるあなたの手が煩わされることはありません。証券会社や銀行がすべて完結させます。

株式譲渡益はFDAP所得ではありませんので、1042には記載されません。Form W-8 BENがしっかり提出されているか、なんらかの理由であなたが日本居住だということを証券会社が知っていれば、源泉徴収はされません。アメリカで課税関係は発生しません。